こんにちは。とても久しぶりの更新となってしまいました。お元気でいらっしゃいますでしょうか。今回は、2018年に四国生産性本部様の機関誌「創造の架け橋」に寄稿させていただいた文章を掲載します。
突然ですがクイズです。
「ある人があなたに、3日間の自由な時間と、10万円の自由に使えるお金をくれました。あなたは、その時間とお金を何に使いますか?」
いかがでしょうか。2泊3日の国内旅行を思い浮かべた人が多いのではないでしょうか。家で3日間のんびりして、10万円は貯金するという人もいるかもしれませんね(笑)。
それでは次の問題です。
「ある人があなたに、3か月間の自由な時間と、1000万円の自由に使えるお金をくれました。あなたは、その時間とお金を何に使いますか?」
いかがでしょうか。少し難しい問題ですね。世界一周のクルーズ旅行や海外留学などを思い浮かべた人がいるでしょう。「1000万円を元手に起業する」と答えた人もいました。
それでは最後の問題です。
「神様があなたに、30年間の自由な時間と、無制限の自由に使えるお金を与えてくれました。あなたは、その時間とお金を何に使いますか?」
いかがでしょうか。とても難しい問題だと思います。これまで、「学校を作りたい」とか「森を作りたい」と答えた人がいました。実は、この問題の答えに、あなたの「存在意義」が表れると言われています。
1.ブランドって何?
「ブランドとは?」と訊かれると、「ヨーロッパの高級品」や「企業や商品・サービスのマークや名称」だと思っている人も多いのではないでしょうか。
「ブランド」には様々な定義があります。例えば、一般社団法人ブランド・マネージャー認定協会による「消費者・顧客から見た『ブランド』の定義」によると、「ある特定の商品やサービスが消費者・顧客によって識別されているとき、その商品やサービスを『ブランド』と呼ぶ」とあります。
これに対し、筆者が考える「ブランド」とは、冒頭の3番目の質問の答えでもある「企業の存在意義」や「社会的意義」であり、「わが社は何のために存在するのか」というブレない軸だと思っています。これは、言い換えれば企業のミッションであり、唯一無二の差別化ポイントだと言えます。
例えば、スウェーデンに本拠地を置く自動車メーカーのボルボの存在意義は「原罪感」であると言われています。これは、「自動車は人の生活を便利にするものである反面、人の命を奪う凶器にもなる。だから世界で最も壊れない自動車を作る」というミッションに繋がり、「ボルボの車は頑丈で壊れにくい」という「ブランド」になっています。
2.ゴールデンサークル理論
ゴールデンサークル理論とは、マーケティングコンサルタントであるサイモン・シネック氏が提唱した理論です。概要は以下の通りです。
多くの企業はゴールデンサークルの外側である「What:何を」「How:どのように」から伝え、中心の「Why:なぜ」を伝えていないと言われます。多くの企業は自社の商品・サービスを次のように伝えているのではないでしょうか。
「素晴らしいスペックのパソコンが誕生しました(What:何を)。美しいデザイン、動画編集もストレスなくサクサク動かせます(How:どのように)。(「Why:なぜ」はなし)。おひとついかがですか?」
この場合、人々はこの商品を買いたいと思うでしょうか。もしかしたら「他の商品と変わらない。既に持っている」と感じるかもしれません。しかし、次のように伝えられたらいかがでしょうか。
「私達は世界を変えられると信じています。そして常に既存の考え方とは違う考え方をします(Why:なぜ)。世界を変えるために美しいデザインかつ機能性に優れた製品を世に送り出そうと努力するうちに(How:どのように)、このような製品ができあがりました(What:何を)。おひとついかがですか?」
どうでしょうか。購買意欲が沸きませんか? ここでは、サークルの中心から外側へ向かって、「Why:なぜ」⇒「How:どのように」⇒「What:何を」の順で想いを伝えています。情報の順番を変えただけですが、まったく違いますよね? もうおわかりと思いますが、これはアップルの伝え方です。こうして、多くの人がアップル製品を購入するようになりました。このように、「Why:なぜ」を示したときに人は動くのです。「What:何を」ではありません。つまり、「Why:なぜ」は企業のミッションであり、企業の変わらない「想い」です。多くの人々は、この「想い」に共感して購買行動を起こします。この、「Why:なぜ」を持ち、しっかりと伝えている企業は、お客様から選ばれる力を持っています。しかも長期間です。
このように、企業におけるブランディングでは、最初に「Why:なぜ」を構築することが必要です。そのためには、どのようにしたら良いでしょうか。
3.ブランド構築のステップ
前述の「Why:なぜ」を構築するためのブランド構築のステップは次の通りです。
STEP1:企業の強みとターゲット設定
自社が有する経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)の活かし方を考え、強みを抽出します。強みをカタチにした商品・サービスを、どの市場・どんなお客様向けに投入するかを決めることがターゲット設定です。
STEP2:差別化されたポジションの確立
商品・サービスを投入する市場において、競合他社製品の違いを明らかにし、自社製品の 独自性(ユニークな価値)を顧客に理解いただく必要があります。STEP2では、「顧客 に最も理解されやすい場所」に自社製品を位置付けます。
STEP3:ブランドアイデンティティの確立
ブランドとは自社製品を識別して貰う手掛かりです。単にシンボルマークを作るのではなく、STEP3では、ポジションの確立によって見出された自社の独自性を、顧客にどう認知されたいかを端的な言葉で表現することを学びます。
STEP4:戦略的プロモーション「チラシ・広告など」
チラシは誰でもできるプロモーションの出発点です。しかし、効果の出るプロモーションにするためには基本を押さえなければなりません。目的や期待するゴールの設定方法、コンテンツの表現手法など、ブランドアイデンティに基づいた広告やデザインに繋げます。
STEP5:戦略的プロモーション「WEBサイトなど」
インターネットの浸透により、戦略的なプロモーションはWEBサイト抜きには考えられません。「戦略的なWEBサイトはどのように考えたらよいのか?」から、「最近流行りのSNSとの組み合わせ」について検討します。
STEP6:戦略的プロモーション「展示会・営業」
営業は属人的になりやすく営業マンのスキルによって業績が大きく左右されます。安定的な売上を上げるためには、経営戦略に基づいた営業戦略を立案し、営業が実行するように仕組みを作る必要があります。そのための営業活動を「見える化」し、活動を営業マンに任せきりにしない手法が必要です。
STEP7:戦略的プロモーション「プレスリリース」
プレスリリースは、ちょっとしたコツや工夫によって中小企業でもメディアに取り上げられることが可能です。中小企業の強みに着目することにより、メディアに取り上げられるプレスリリースを発信できます。
4.まとめ
商品・サービスの機能や性能、品質での差別化が難しくなる中で、顧客の心の中に深く働きかけるブランディングが重要となってきています。このため、従来のようにプロモーションを場当たり的に行うのではなく、「なぜ、どのような意図をもって行うのか」という目的を明確にする必要があります。そこで、企業を取り巻く環境分析から、市場の細分化および見込み客の選定、独自性の発見を経て、自社のブランドアイデンティティを確立します。その後、ブランドアイデンティティに基づいたプロモーション戦略を立案し計画することで、一貫性・継続性のあるプロモーションの実行に結び付けることが重要です。
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