私が経営の要諦を学んでいる稲盛和夫さんの機関誌(39号)より、講和内容の概要を掲載します。
1兆円を超えるような巨大企業をつくりあげた方々がだんだん少なくなっている(2001年時点)。ダイエー、そごう、西武グループ、ヤオハンなどが苦境に陥ったり、消滅したりしている。このような没落を回避できる法則や方法があるのではないかと考えた。人生というドラマがどうして作られるのかを解明することができれば人は過ちを犯さなくて済むのではないか。それは、我々の人生を形作っている運命を意識する必要がある。たとえば一流の学者は、優秀な頭脳と、大病に冒されず、事故にも遭わなかったという運命があったから。この運命と同時並行的に人生を構成する大きな要素が「善根は善果を生み、悪根は悪果を生む」という因果応報である。つまり、持って生まれた運命と、現世における思い、行動によってつくられた業(カルマ)によって生ずる現象が人生ドラマをつくる。糸を紡ぐように運命と因果応報の法則が縒り合されてつくられているのが人生。運命は善業により変えることができるが、因果応報の法則は一分一厘の狂いもない。
「善きこと」とは、六つの精進を肝に銘じて仕事をすること。これは六波羅蜜と関係が深い。
布施:世のため、人のため、利他の心 ⇒ 六つの精進の「善行、利他業を積む」にあたる
持戒:煩悩を抑える ⇒ 六つの精進の「謙虚にして奢らず」「生きていることに感謝する」「反省のある毎日を送る」にあたる
精進:誰にも負けない努力をする ⇒ 六つの精進の「誰にも負けない努力をする」にあたる
忍辱:耐え忍ぶこと ⇒ 六つの精進の「感性的な悩みをしない」にあたる
禅定:一日一回心を静かに鎮めること
智慧:悟る
「善きこと」を重ねていけば、運命すら変えることができる。宇宙には神羅万象あるゆるものを生成発展させ、成長させようとする善意の意識があるため、素粒子が原子に、原子が分子に、分子が高分子になり、素晴らしい人類までも作ったという理解があれば、宇宙の成り立ちは説明できる。
自然界は我々に試練を与えて、その試練をどのように乗り越えていくかを観察している。災難と思えるような困難に遭遇し、その苦しさに負けて、世を恨み、人を妬み、不平不満を漏らすことで人生をさらに暗く辛いものにする人がいる。逆に苦しさに耐え、努力を怠らず、いつかきっと自分にも明るい未来がくると信じて一生懸命に精進を重ねっていった結果、素晴らしい成功を収める人もいる。